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研究班・課題の成果
図像資料の体系化と情報発信
課題1 『マルチ言語版絵巻物による日本常民生活絵引』の編纂刊行
- 研究経過
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- 研究成果
『絵巻物による日本常民生活絵引』全5巻のうち、第1巻と第2巻を対象に、描かれた事物に付された名称(キャプション)を英語、中国語、韓国語に訳し、さらに絵引に付された絵から読み取った解説文を英語訳して、世界的に利用可能な図像資料にするとともに、それを通して絵引という世界的に類のない図像活用方式を世界に提示して、世界的な共通方式にすることを目指した。
言葉を異なる文化に訳して示すことは多くの困難が伴うが、特に特定文化の過去の事象を多言語で示すことは簡単なことではないことが検討過程で明らかになり、それを克服するための検討に時間を多く割くことになった。そして、本プログラムの大きな目標の1つが、若手研究者の育成にあることに鑑み、異文化の言語に翻訳する基礎作業には、各言語を母国語とする博士課程在学中もしくは修了の日本社会・文化を専攻する留学生を依頼し、グループを組織して進めた。翻訳に参加したのは神奈川大学大学院の学生のみでなく、東京大学大学院その他の多くの留学生である。この若手研究者である留学生諸氏の尽力によって訳出された各言語の内容を、班員が詳細に検討し、適切な語彙を確定した。
この翻訳・校閲の過程で、『絵巻物による日本常民生活絵引』編纂の問題点も明らかになってきた。当時の研究水準に規定されて、必ずしも適切な語彙が選択されていないことが判明した。そのため、『絵巻物による日本常民生活絵引』そのものの改訂も考えられたが、今回はあくまでも原著を前提に編纂することに重点を置き、間違いについては最小限の訂正に止めた。また、短歌や長文の引用文は、他言語に訳出することが困難であり、要約して訳したり、一部省略したりすることで、異文化からの理解を容易にするよう工夫した。