海外研究機関との連携

提携研究機関紹介

1 華東師範大学

上海市にある総合大学であり、1951年上海市内のいくつかの大学が合併して創立された。多くの学部を擁しているが、そのなかで近年発展めざましいのが対外漢語学院である。中国語と中国文化を学ぼうとする世界各地の学生が集っている。そのなかに設置されている大学院は、中国文化の研究を進めており、中国各地から進学してくる。特に幅広く研究活動を行い、民俗学界に影響力のある陳勤建教授が所長を務める中国民俗保護開発センターは、多くの民俗学研究者を養成しており、優秀な博士論文を提出した若手研究者も少なくない。学院の性格もあり、研究センターは世界各地での学術活動、学術協力を進めているが、日本の研究者との交流も盛んに行われている。神奈川大学21世紀COEプログラムが提携したのはこの研究所である。

2 北京師範大学

北京市にある総合大学である。多くの学部をもつなかで、特に中文系は中心的な存在であり、中国民俗学の開拓者鐘敬文教授や書家で日本でも有名な啓功教授など多くの優れた教授を擁し、活発に学術研究を展開してきた。なかでも鐘敬文教授が開拓した民間文学研究室は、中国の民俗学研究の拠点として活動し、多くの博士を生み出し、全国的に活躍している。鐘教授が2002年に亡くなって以降、民俗学研究はいくつかの専門組織に別れて活動を展開しているが、神奈川大学21世紀COEプログラムが提携したのは、劉鉄梁教授を所長とする民俗学与文化人類学研究所である。民俗学を中心としたフィールドワークを行い、大きな成果をあげており、研究所メンバーの近年の成果としては『中国民俗文化誌』の北京編を地区毎に刊行している。

3 浙江工商大学

1911年、杭州中等商業学堂として設立され、1980年には大学に昇格し浙江商学院となった。更に2004年浙江工商大学と改名し、経営経済を中心とする六学部の総合大学になった。同大学の中で、本学COEと研究交流を行っているのは日本語言文化学院及び日本文化研究所である。
 もともと同研究所は浙江大学(旧杭州大学)に付置されていたが、工商大学が総合大学となったのを機に、研究所とほとんどのメンバーが移籍し、中国江南地域の日本研究の中心として現在に至っている。
 同研究所を支えているのは二人の王氏、唐代を中心とした日中交流史研究の第一人者王勇氏と、近世文献学の碩学王宝平氏の二人である。二人は八十年代の極めて厳しい研究環境の中、日本研究の専門家として、中国の研究をリードしてきたが、最近では自らの研究とともに、若手の育成にエネルギーを注いでいる。特に、自らの専門分野に限定せず、日本の古典文化から現代のポップカルチュアに及ぶ、ユニークな研究者が育ってきている。中国における今後の日本研究がどの方向に向かっていくのかを知る上でも、浙江工商大学と日本文化研究所から目が離せない。

4 中山大学

広東省広州市にある歴史のある総合大学である。1924年に孫文によって創立された。広大な緑豊かなキャンパスのなかに校舎が点在する。中文系はそのなかでも重要な位置を占める学部であり、古い歴史を持つが、近年は中文系を基礎に設置された中国非物質文化遺産研究センターの活動が注目されている。これは日本の21世紀COEプログラムに相当する中国政府教育部人文社会科学重点研究基地であり、国からの補助金によって大規模な調査研究を展開している。研究活動の柱は、伝統戯曲の調査、口頭文芸と民俗の調査研究、それに非物質遺産保護対策の3つである。スタッフは戯曲研究の康保成、民俗研究の葉春生、非物質文化遺産対策の高小康などの教授を擁している。本プログラムとの提携は2005年からであるが、相互訪問は頻繁に行われ、中山大学開催のシンポジウムにも参加している。

5 香港大学

いまや世界経済を牽引する中国は、政治的には社会主義体制をとりながら台湾との統一を睨みつつ、「一国両制」という政治体制を香港特別行政区で実験している。この香港特別行政区の高等教育を担当する最高学部が香港大学と香港中文大学である。香港大学は、1877年に創立された香港医科大学を前身とする香港でもっとも歴史の古い大学で、現在は医学部、工学部の他、文学部、教育学部、人文学部、社会学部など文科系の学部を有する香港を代表する大学である。なかでも、香港大学のアジア研究(Centre of Asian Studies、亜洲研究中心)と日本研究(Faculty of Arts, Japanese Studies)の水準が高いことには定評があり、神奈川大学21世紀COEプログラムとは、COE研究拠点のひとつである大学院中国言語専攻の紹介でこれらの学部や研究機関と提携関係を結び、活発な研究者の交流とシンポジウムへの参加などを実現している。

6 延世大学

韓国の大学は国立のソウル大学と私学の延世大学と高麗大学がピラミト型の頂点に位置する構造をとっている。延世大学は朝鮮時代末期の1885年に設立されたセブランス医学専門学校を前身とするが、1970年代以降は文科系に関連する支援を大幅に拡大している。延世大学付設の中央博物館は1928年に開館し、韓国の大学付設の博物館の嚆矢といわれ、とくに、韓国の伝統文化に関連する文化資源の収集と研究には定評がある。1988年には大学の100周年記念事業として中央博物館の新館が完成し、歴史、民俗、陶磁器などを展示する9つの常設展示室が設けられた。また、近年は韓国の儒教と朝鮮時代の古典研究をリードする「国学研究院」の活動が世間の注目を集め、2001年度からは韓国の学術振興財団の支援による研究プロジェクト「開港前後の韓国の伝統社会の変動と近代化の模索」が選定された。「国学研究院」が発行する雑誌『東方学志』は、韓国の学術振興財団の評価によって全国Aランクの学術誌として高く評価されている。神奈川大学COEプログラムは、延世大学の中央博物館と「国学研究院」、そして、人文学部と活発な情報交換と人的交流を行っている。

7 ブリティッシュコロンビア大学

カナダ太平洋岸の中心都市バンクーバーにある総合大学である。1961年に設立されたアジア研究学部はカナダのみならず、北アメリカにおけるアジア研究をリードする存在である。また、この学部の研究を支えるアジア研究所は1978年に設立され、現在は日本研究センター、中国研究センター、韓国研究センターなど5つのセンターをもち、日本はもちろんのこと、アジア各地域の歴史、文学、社会、言語を専攻する研究者を擁している。特に日本については、日本古典文学と日本文化に関する研究者が揃っており、北米における日本文化研究の中心的存在となるべき条件が整えられている。また、アジア研究センターに付属して、新渡戸稲造を記念した新渡戸庭園があり、日本への親近性に満ちた雰囲気を作りだしている。本プログラムの第2回、第3回の国際シンポジウムにも研究者の参加を得て、活発な討論が展開され、また、2006年には同大で開催された「日本における旅の文化」のシンポジウムに本プログラムから2名が参加した。

8 サンパウロ大学

サンパウロ大学日本文化研究所は、地上三階、地下一階の立派な独立した建物で、研究室、講義室、図書室、展示スペースを持ち、大学市として独立した自治体を形成するほど広大なサンパウロ大学の構内の一角にある。ちなみに、同大学には文化人類学の碩学レヴィストロースも席を置いたことがあり、人類文化の研究には長い伝統を持ち、立派な民俗博物館もある。研究所の建物は鬱蒼たる樹木に覆われ、研究所らしい雰囲気に満ちている。研究所は、鈴木悌一、前川隆らブラジルにおける日本学の草創期の研究者によって創立された。現在、スタッフは織田順子所長以下教授、助教授7名の所員と職員数名で構成され、サンパウロ州のみならずブラジルにおける日本文化研究のセンターとなっている。また、日本学科の大学院の講義もここで行われている。従来、日本語、日本文学の研究が中心であったが、近年文化人類学のスタッフを加え、日本文化全体に研究対象を広げつつある。


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