研究班・課題の成果
環境と景観の資料化と体系化
3班 「環境と景観の資料化と体系化」総括
第3班は当初「景観の時系列的研究」、「環境認識とその変遷の研究」、「環境に刻印された人間活動および災害の痕跡解読」の3グループがそれぞれの課題を掲げ、研究調査を開始した。前半の3年間においては、3グループはそれぞれ有機的な関係を構築するための研究をおこなったが、2006年度には班全体の再編成がなされ、他の班からも新しくメンバーを迎えて進める調査・研究体制ができあがった。その体制の下ではグループ固有の研究課題の追求が優先されることとなり、相互の関連性を追求する面は後退したが、課題内部においては、それぞれ独自の研究成果を挙げることができた。
2004年度に刊行した『環境と景観の資料化と体系化にむけて』において環境と景観に関する民俗学、地理学、歴史学の異なる分野からのアプローチがおこなわれ、相互に共通認識を求める前提的作業を開始した。各領域をさらに深めるため、グループの再編成がおこなわれ、課題1「環境の時系列的研究」、課題2「環境認識とその変遷の研究」、課題3「環境に刻印された人間活動および災害の痕跡解読」に分かれ、それぞれの課題に応じた研究調査を展開した。課題1においては日本常民文化研究所が所蔵する「澁澤写真」の撮影場所の特定を中心とする調査分析、課題2においては西日本と東日本の特定地域を調査対象に定めたが、対象地が災害に見舞われるなどの事態が生じたため、調査が中断され、当初の計画が実行されなかった。後半2年間には中世鎌倉の発掘調査の考古学的成果から環境認識の変遷に関する考察を深めた。課題3においては海外神社跡地、租界、関東大震災の絵葉書を研究素材とする3組に分かれ、それぞれの調査分析をおこなった。その結果、人類文化としての非文字資料は、文字資料に対立的に存在するものではなく、文化総体のなかで補完関係にあることが研究成果において実証され、再確認された。また、多くの写真類が物語る現実はすでに失われた景観であるため、分析の妥当性を広く世に問うために、それぞれのグループが追求する課題に合わせた写真類のデータベース化を図り、公開することにした。